鯰の民俗事典

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全国なまずサミット

全国なまずサミットとは、日本各地で“なまず”にまつわる食文化・地域振興・養殖・生態、なまず信仰など、さまざまな視点からその魅力や歴史を発信・共有するイベントです。 2017年に「なまずの里よしかわ(埼玉県吉川市)」で始まり、これまでに 吉川市・神石高原町・大川市・行方市 などの自治体で開催されてきました。活動の中で 7月2日を「全国なまずの日」として正式登録 するなど、なまずの魅力を全国へ広く伝える取り組みも進められています。

私は主にナマズにまつわる信仰や風習を研究していますが、2024年からメンバーとしてご縁をいただきました。情報を共有し合いながら、地域振興がさらに活発に進み発展していくことを楽しみにしています。

このページでは、全国なまずサミットについてご紹介します。なまずサミットのロゴマークは、吉川市の承諾を得て掲載しています。

サミットの開催風景

【2025年開催 全国なまずサミットin 神石高原町】

 2017年に埼玉県吉川市の呼びかけではじまった「全国なまずサミット」。昨年、埼玉県吉川市長との意見交換会にお招きいただいたご縁から、今年もメンバーとして壇上でお話しする機会をいただきました。ここでは、レセプション、サミット開催の様子をご紹介します。
 10月26日(日)に行われた今年の会場は、広島県の東部に位置する自然豊かな神石高原町。サミットは、今年第45回を迎えた「さんわふるさとフェア」内で開催されました。この地域は、油木高校の生徒達がナマズ養殖に取り組む町としても知られており、地元の方々の熱意と取り組みに触れる貴重な機会となりました。
 サミット前日に行われたレセプションでは、油木高校の皆さんが、ナマズ養殖の現状や取り組みなど、日頃の研究成果を発表されました。魚の養殖と水耕栽培を組み合わせた次世代型農業「アクアポニックス」に本格的に取り組んでおり、どの生徒さんも自分の考えをしっかりと伝えていて、とても素晴らしいスピーチでした。お食事の際には、神石高原町の特産品を使った料理とともに、なまずのフリッターが振る舞われました。臭みが全くなく塩加減も程よく、とても美味しくいただきました。
 そして迎えた祭り当日。朝まで降っていた雨も上がり、お天気にも恵まれました。埼玉県吉川市のイメージキャラクター「なまりん」と一緒に、油木高校なまずマスコットキャラクター「なまっし~」も登場し、会場が盛り上がります。ステージ上では、埼玉県吉川市をはじめ、岐阜県羽島市、佐賀県嬉野市、福岡県三川屋さん、福岡県大川観光協会、生き物文化誌学会常任理事などの方々が、各々活動を発表されました。私も本番では、自作の「ナマズにまつわる伝承地全国MAP」を掲げつつ、ナマズに関する伝承や信仰についてお話しさせていただきました。とても賑やかで温かい雰囲気の中、皆さまが熱心に聞いてくださいました。ありがとうございました。
 当日の様子がテレビ新広島やYahoo!ニュースでも紹介されました。
 よろしければぜひご覧ください

【2024年開催 全国なまずサミットと岐阜羽島の祭り】

JR岐阜羽島駅前から県道を歩行者天国にし、なまずグルメの販売をはじめ、物産ブースなどが楽しめる「ぎふ羽島駅前フェス2024」(11月9.10日開催)。 今回フェスを通じて行われた「全国ナマズサミット」では、羽島市、埼玉県吉川市、福岡県・大川観光協会、佐賀県・嬉野温泉観光協会、 広島県神石高原町の関係者の方々が、ナマズに関する食文化や町おこしの取り組みについて紹介しており、 大変興味深く、深く理解することができました。 同時に、生き物文化史誌学会 常任理事の緒方先生からは、日本にはナマズを食べてはいけない地域もあり、 その背景にある信仰の重要性についてお話をうかがいました。 私自身、これまでに全国のナマズにまつわる伝承地を多く訪れてきましたが、「信仰に基づかないナマズを食べる祭り」は、 初めてのことで、とても新鮮な印象を受けました(※1)。

 地域の関係者によると、羽島市を流れる逆川(竹鼻町と下中町加賀野井の境付近から派生し、 羽島市内を流れて長良川に注ぐ木曽川水系の河川)には、ナマズがたくさんいるそうです。 また、会場移転の際には、地域の方々が協議を重ねた結果、「なまず太皷」(写真⑧)の名前はそのまま残すことになったとか。 なるほど、この地域で食文化が根付くのは自然なことですし、「ナマズ」が祭りの象徴であることもうなずけます。 一方、会場の移転を機に場所を変えた、祭りを通じて作られた「木彫りナマズ」があるということも教えていただきました。 現在は、会場から北東に2km余り離れた八剱神社に御神体として祀られているのこと。

  さっそく現地を訪れたところ、ナマズを祀る祠を置いた小舟が、境内の大池に浮かんでいました(写真⑨)。 古くより出世開運・除災厄除の神として崇拝される八剱神社にちなんで宝船の形で祀られているのかもしれません。 思えば、物産ブースでナマズ絵馬(商品化された現代の絵馬)とナマズの土鈴を購入したのですが、 絵馬には、鯰絵「繁昌たから船」の 図柄が印刷されていました(写真⑩)(写真⑪)。「 ぎふ羽島駅前フェス2024」は、地域の方々が、祭りを盛り上げようと試行錯誤を繰り返しながら、努力が伝統として形になり、 これからも大切に受け継がれている貴重なお祭りだと思いました。

(※1)「ナマズを食べることが信仰に基づいた祭り」の一例としては、滋賀県の三輪神社の例祭が挙げられます。 この祭りでは、東西に分かれた当番村が伝統的な鰌鮨(ドジョウとナマズを使ったナレ鮨)の神饌調理が行われます。 厳重な清浄が求められるナレ鮨は、神輿に担がれ町内を練り歩き、神事の後に地域の人たちでいただきます。 また、かつては、熊本県井口八幡神社の「川なまず」という祭りでは、田んぼの水や川をせき止めて水を減らし、 ためた水の中の魚を捕り、 それを持ち寄って料理し、みんなで食べるという自然崇拝を目的にお祭りが行われていました(現在は開催されていません)。

【2024年開催 全国なまずサミットin岐阜羽島】

2017年に埼玉県吉川市からの呼びかけではじまった「全国なまずサミット」が、先週末に開催されました。 今年の会場は「ぎふ羽島駅前フェス2024」のメインステージ。 ナマズを活かしたまちづくりに取り組む自治体や関係者の方々が、ナマズに関する食文化や歴史などを発信します。 祭りでは「埼玉県吉川市のイメージキャラクター「なまりん」と、岐阜県羽島市のたけちゃん・はなちゃんが登場し、 イベントがとても盛り上がりました(写真①)。また、自治体の方々が熱心にナマズの食文化や活動について語られている中、 ご縁をいただき、僭越ながら私もスピーチをさせていただきました。 改めて、全国のナマズにまつわる信仰や風習に関する情報を共有し合い、地域振興がさらに活発に進んでいくことを強く実感しました。

前日には、ナマズをはじめとする川辺の生物や環境をテーマとした講演会「川辺の生物サミット」も開かれました。 岐阜協立大学・森教授、埼玉県吉川市・中原市長、羽島市・松井市長の講義を、地元の小学生たちが熱心に受講していました。 岐阜県は木曽川と長良川に挟まれた地域であり、豊かな水資源のもと、ナマズをはじめとする淡水生物の宝庫。 この地域においても、河川や湖などの自然環境の保全にも取り組み、淡水生物を大切な財産として守り、文化の継承を推進しているといいます。 また、ナマズを食べた後におちょぼ稲荷をお参りするという慣習があったというお話が印象的でした。 その後催されたレセプションでは、ナマズの蒲焼きやなまずフライ、なまずバーガーなど、食べきれないほどのナマズ料理が並び、 改めてナマズの食文化が長年にわたり受け継がれてきたことがわかりました(写真②)(写真③)。

この「ぎふ羽島駅前フェス2024」(写真④)。祭 りの由来は、もともと1891年に羽島市で発生した大地震にあります。 その震災を風化させないために100年後の1990年に始まったと伝えられています。 以前は祭りの名前は「美濃竹鼻なまずまつり」といい、竹鼻のまちなかで開催されていたそうです。 コロナ禍の影響で、2020—22年までお祭りは中止となり、昨年から復活しましたが、2017年までは 「ぎふ羽島駅前フェス」としてリニューアルされました。 今回地域の方々にたくさんお話を伺う中で、ナマズにまつわる民俗的な魅力が満載なことに気づきました。 次回は「ぎふ羽島駅前フェス」を通して、岐阜羽島とナマズの結びつきについて、お話したいと思います。

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